日本もヘイトクライムの国か

ヘイトクライムについて考えてみた。

 ヘイトクライムは、ヘイトスピーチ、マイノリティーへの差別、イジメ、ハラスメントから殺人行為まで他人への暴力的な様々な行為を指す。

 今、私が考えたきっかけはエル・パソ市の事件だが、ロヒンギャユダヤなどの一般人による大規模な攻撃はなぜ起きるのかという漠然とした疑問、憤慨は子供のころから抱いていたし、何とかするのが国、地域、家族のやるべきことなんだとも感じてもいた。

 住民の83%がヒスパニック系、メキシコ系であるエル・パソ市の事件は8チャンの犯行声明であきらかな、移民に対する白人優位の意識が高じたものであり、NZのクライストチャーチの事件に倣ったものだと明らかになっている。原因が嫌悪感にあること、その意識の発現に至る情報・伝聞にある。

 社会、コミュニティーが全体的にそのような嫌悪意識を抱き、共有し、犯罪を許容されるような感覚を抱いて犯罪に至るのだと分かる。

 

 アメリカではこの一週間に4件の銃乱射事件があった。その中のオハイオ州デイトンの事件は銃マニアによるテロと見なして良い。しかし、防弾チョッキや耳防護カバー、目の保護をするアイマスクをし、100連発のドラム式弾倉を装着したライフルが用いられる重装備で、乗り付けた車にはべつのマシンガンもあった。そのような銃規制のない状況であることは凶行の悲惨さを招くものだ。

 

 ヘイトクライムによる銃撃事件はこの数年急激に件数が増えているが、かつて共和党ブッシュ大統領は9.11のテロの際に「イスラム系の人々をハラスメントする人々は恥を知るべきだ」と声明を出した時、ヘイトクライムは翌年は三分の一になった。その後、オバマ大統領の時代には徐々にわずかに増えたが、さらにトランプ大統領になってからは毎年激増し、しかし、トランプ氏が大統領候補時代にイスラム系の人々の入国禁止を提案すると、その月、イスラム系の人々に対するヘイト・クライムは過去記録から3番目に最多となった特に、テキサス州では、2018年、ヘイト・クライムの数はこの10年では最多を記録した。テキサス州の主要都市を見てみると、2018年は前年と比べた場合、ヒューストンでは191%増、ダラスでは150%増、サンアントニオでは100%増となった。2013年以降は毎年増えている。大統領の発言がその発生に大きく関与していることは明らかと言って良いだろう。

 トランプは明らかなヘイトスピーチを平然とツイートするが、テロ犯の犯行声明・マニフェストは8チャンが用いられやすい。かつての8チャンのオーナーは今のオーナーはそれらに対する規制手段を持たず、対策をするつもりも無いと非難しているが、ヘイトスピーチに類するメッセージが頻出している。これらを書く人も読む人も、それによりさらに嫌悪意識を高める結果を起こしている。

 同調圧力とか、社会に吹く言論風圧とか言われる気運は多くの人を動員する。それがつむじ風から竜巻、嵐に発達して行かせる仕組みが我々の人間社会に存在する。何が正義かは時代により変化して行くものだが、人々の作り出す犯罪的行為の許容意識はナチズムや戦争へ到る。

 インフルエンサーの中でも悪質な、ヘイトスピーチを行う者たちに対する規制は現在も行われているのだが、その基準は為政者や規制に当たる警察や委員会などの人間の考え方に依存する部分が強い。アメリカでは警官による人種差別、宗教差別、経済格差による差別が起こす凶行も多数報告されている。保育園や学校、養老院においても差別による嫌悪意識が風となり、跳び出した犯罪者が発生する。教師が生徒をいじめたり、生徒間のイジメを許容するのも同じ原理であり時折、人の命が失われもする。いじめっ子、悪口が好きな子の成長した姿がトランプ大統領に見られる。一般的にも存在するものだ。

 

 嫌悪意識を醸成するツールに使われてしまうSNSが一般的に用いられるようになり、本来は少数のマイノリティーであるべき犯罪人が増えてしまう。遊び感覚でいたずら心で投稿したものがある種のコミュニティを作ってしまう。インフルエンサーはそれが面白いのだろう。一方で、エキセントリックな投稿が人気を集めたり、その人気によって収入が得られたり。

 これらに対しては厳重なシステムを用いて危険思想を検出し、危険度に応じて何段階かの素早い対応をしなければいけない。

 ケンブリッジアナリティカ社のような、SNSを利用したコミュニティの意識把握技術は、商業施設の販売促進から選挙の投票操作、ロビー活動に至る様々な意識操作を行っている。元はテロ行為の予防技術の開発という軍事的目的だったが、利益が出ると分かった意識操作に用いられているのは問題だ。それがヘイトクライムとかテロに繋がってしまうのは皮肉な結果でもある。通常の一般人がテロリストに変わる一因でもある。

 

 私たちは海の向こうの話だと軽く思ってしまうが、我が国は銃規制があるから銃撃事件は起きにくいが、ヘイトクライムは確実に発生しているから、もしも銃規制がなかったならば、我が国もアメリカ並みのテロ横行がありうる状況である。これは間違いがない。仏教徒はそんなことはしないなどという人もいるが、ロヒンギャを見ればそんなことはあり得ない。ハラスメント、イジメやモンスターペアレンツ、一部の右翼と自称する犯罪集団、そんな例はいくらでもある。

 我が国でもヘイトクライムは発生し続けている。その原因となるSNSやメディア、政府の右翼、タカ派的発言は現実に存在する。アメリカ並みに。

 64歳の体力の衰えた男がラスベガスの高級ホテル32階スイートルームからイベント会場に銃を乱射するようなことは今のところ起きていない。だが、怒りを醸成する装置はアメリカ並みに日本にも存在する。

 

 ヘイトクライムは意識をコントロールし、マイノリティや弱者を排除する為政者の態度によって予防することが出来る。タカ派や悪口好き、いじめっ子では必ず悪質な犯罪を醸成する。他山の石はアメリカにある。トランプがどれだけのヘイトクライムを増加し、人の命を失ったか。明らかな現実の数字を見ればわかるのだ。

 きちんと予防する国になってほしいものだ。