ファスナーより拝みボタンが好きだ。

昔、20代のころ、親しかった女性が二人で着られるジャケットを作ってくれた。

 拝みボタンのチャコールとブラウンの間の色だった。お母さんが上手だった影響で洋裁が出来たので、ジャケットを作ってみたかったとか。ジャケットは難しいと言われているので、かなりのチャレンジだと思うが、そんな彼女の実験台になら喜んでなってみたかった。

 ご存知のように拝みボタンは、本当は男女差があるけれども、一見すると男物でも女物でもない袷せ。少しもおかしなところのない上手な出来だった。ひと月のうち20日以上、ほとんど私が着るようになり、彼女は少し小さめで同じデザインの物を作った。

 そんな素敵な記憶をくれた彼女も記憶の中の人になり、reverieにも出なくなり、数年後には物置に入ったジャケット。それでも、拝みボタンの造りが好きで、スーツを作る時に時々だけれど飾りボタンを選んで、拝みボタンを指定するようになった。

 昨日、冬物のスーツを片付けていたら拝みボタンのものが出てきて、まるで自分のオリジナリティのように着続けていたけれど、元は彼女のアイデアだったと少し苦く笑ってしまった。

 先日はLGBTのことを記したと思うけれど、拝みボタンならば男女関係ないのではないかとも思う。ファスナーで前を合せるジャケットも多いけれど、なんだかファスナーというのはジャージトレーナのようで安上がりに見えてしまう。飾りボタンを選ばせるなどで一人ひとりのオリジナリティも出した制服でも良いなと思う次第。